2022.01.29

給与の支払いのない青色事業専従者を控除対象扶養親族とできるかどうか

[相談]

私は昨年、個人で衣料品販売店を開業し、生計を一にする妹(年齢20歳)を

青色事業専従者として届け出を行いました(届出給与額月額100,000円)。

しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により売上が当初見込んでいた金額の

2割程度となってしまったため、結局、妹には昨年中1円の給与も支払うことができませんでした。

この場合、妹は私達の父など、生計を一にする他の親族の控除対象扶養親族と

なることができるのでしょうか。教えてください。

なお、昨年の妹には上記のほか、所得は一切ありません。

[回答]

ご相談の場合、妹さんは他の同一生計親族の控除対象扶養親族と

なることができるものと考えられます。

[解説]

1.青色事業専従者給与制度の概要

青色事業専従者給与制度とは、青色申告の承認を受けている納税者と

生計を一にする配偶者その他の親族(※1)で、その納税者の営む事業に従事する人

(青色事業専従者)が、その事業から所定の届出書(青色事業専従者給与に関する届出書)

に記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には

その給与支払額をその納税者の事業所得等の必要経費に算入(※2)し

かつ、その青色事業専従者のその年分の給与所得とする所得税法上の制度です。

  1. ※1 年齢15歳未満の人を除きます。
  2. ※2 必要経費に算入されるのは、その給与の金額のうち、その労務に従事した期間
  3. 労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模
  4. その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況等に照らし
  5. その労務の対価として相当であると認められるものに限られます。

2.控除対象扶養親族とは
所得税法上、納税者の親族(配偶者を除きます)等で

その納税者と生計を一にする人のうち、その年分の所得金額が48万円以下である人を

「扶養親族」といいます。

その扶養親族のうち、年齢16歳以上の人を「控除対象扶養親族」といい

納税者が控除対象扶養親族を有する場合には、その納税者のその年分の金額から

その控除対象扶養親族1人につき、原則として38万円を控除すると定められています。

ただし扶養親族からは、上記1.の青色事業専従者に該当する人で給与の支払を

受ける人を除くと定められています。

3.給与の支払いがない青色事業専従者の取扱い
上記2.で述べた通り、所得税法上の扶養親族の対象から除かれるのは

給与の支払いを受ける青色事業専従者です。

このため、青色事業専従者として所定の届出をした人であっても

その人が給与の支払いを一切受けていない場合には、他の要件を満たす限り

その人の同一生計親族がその人を控除対象扶養親族とすることが可能です。

したがって、今回のご相談の場合、妹さんは他の同一生計親族の控除対象扶養親族となることができるものと考えられます。

2021.10.09

改正された所得拡大促進税制における税額控除額

[相談]

令和3年4月1日以降に開始する事業年度から、中小企業者等について

所得拡大促進税制(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)が改正されていますが

その改正後の制度における税額控除額について教えてください。

[回答]

 ご相談の改正後の所得拡大促進税制の税額控除額は

その事業年度の控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額となります。

[解説]

1.改正後の所得拡大促進税制の適用要件

令和3年度税制改正後(令和3年4月1日以降に開始する事業年度)の所得拡大促進税制については

その適用要件が「雇用者給与等支給額」の増加要件に一本化されました。

具体的には、中小企業者等の場合、雇用者給与等支給額が前年度と比べて

1.5%以上増加していることが必要とされています。

2.改正後の所得拡大促進税制の税額控除額の計算方法

上記1.の改正後の税額控除額は、原則として

その中小企業者等のその事業年度の控除対象雇用者給与等支給増加額(※1)の15%と定められています。

なお、その税額控除額は、その中小企業者等のその事業年度の所得に対する

調整前法人税額の20%が上限となります。

  1. ※1 控除対象雇用者給与等支給増加額とは、その中小企業者等の雇用者給与等支給額から
  2.   その中小企業者等の比較雇用者給与等支給額を控除した金額(※2)をいいます。
  3. ※2 ※1の金額がその中小企業者等の適用年度の調整雇用者給与等支給増加額
  4.  (※3)を超える場合には、その調整雇用者給与等支給増加額が上限となります。
  5. ※3 調整雇用者給与等支給増加額とは、雇用安定助成金額を控除した雇用者給与等支給額から
  6.  雇用安定助成金額を控除した比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。
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2021.10.01

経営計画を作成すると、どう融資判断に影響を与えるか

 金融機関に提供すべき資料は、試算表や資金繰り表といった財務帳票だけではありません。

経営計画(※ここでは利益計画を指します)も金融機関にとっては重要な判断材料となるのです。

今回はそれがどう融資に影響するかをお伝えします。

 

提供する経営計画の内容

3箇年、5箇年計画が望ましいですが、1年分の利益計画だけでも充分です。

注意すべきことは、実態に則った実現可能なものに限ることです。

そして、その計画をどう実行していくかの具体的な方法を記載する必要があります。

金融機関側は、経営計画ではこれから先どうなっていくのか

そして現状は計画通りなのかを知りたいのです。

 

金融機関の予想される反応

まず、経営計画を作成されている会社様が多くはないので

作成しているだけで金融機関側は下記のように評価します。

・しっかりと計画を立てて事業を営んでいる、将来のビジョンが描けている

・計画通りに進んでいれば、今後の計画も達成する見込みが高い

・数字に理解がある経営者である(計画の見直しや対策を行い

   それに至った具体的な説明を行えば、このようにみる可能性が高い)

上記のように、経営計画を金融機関に提供するだけでプラスの判断材料として

良い印象を持たれる可能性が極めて高いです。

 

プラスの印象がどう影響するか、金融機関の事情①

金融機関では難しい融資判断をする際、支店長が担当者に

「君がお金を貸す立場だった場合、この会社、代表者にお金を貸すか?」

と聞くことがあります。

その時、担当者が経営計画の作成等といったプラスの判断材料を話し

良い印象を与えられれば融資の結果が変わることもあります。

支店長も迷う時が必ずあります。

その時には、何か後押しできる判断材料がほしいのです。

 

プラスの印象がどう影響するか、金融機関の事情②

 まず、金融機関の融資業務フローは下記の通りです。

【1】担当者が稟議書を作成

【2】融資課長、次長が所見を記載

【3】支店長が決済

【4】支店長が所見を記載し本部へ稟議を回す(本部決済)

この際、【1】において担当者が融資をする企業の詳細を記載します。

【3】の支店長決済までなら、支店長も融資をする企業の事を分かっていますが

【4】になると、審査部にいる者が融資の可否を判断するので

 上がってきた稟議書と決算書でしか判断してくれません。

そのため、本部決済の場合はどれだけ担当者が

【1】の内容を濃く、深くしてくれるかが融資の結果に影響します。

 

実際にあった事例

数千万円の融資案件で、本部稟議となった会社様がいらっしゃいましたが

その後の本部審査で否決となりました。

しかし、支店長が本部に足を運び、その会社様や代表者様の事

作成されている経営計画書の事等、稟議書には載りきらない細かい部分まで話し

交渉した結果、融資可決となったケースがありました。

このように、プラスの判断材料を提供しているのといないのとでは

明確な差が生じるケースもあります。

 

最後に

業績良好な会社でも融資金額が大きいものや金利が低いもの

期間が長いといった特別な融資を申し込む際は

ほとんどが本部稟議となります。

そのため、良い条件の融資を通してもらうために

経営計画を提供するのもいいかもしれません。

金融機関からの良好な評価を得るためにも、経営計画を作成し

取引金融機関へ提供することをお勧めいたします。

 

2021.09.10

中小M&A準備金制度と取崩し事由

「中小企業事業再編投資損失準備金制度」とは・・・

 令和3年度改正で創設の「中小企業事業再編投資損失準備金制度」は

一定の計画に従って買収した株式等の取得価額70%までの金額を

準備金として積み立てることでM&A実施年度に損金算入(経費処理)できるものです。

 

 この準備金は,据置期間中(準備金の積立事業年度終了日の翌日からの5年間)に

⇒“取崩し事由”が生じた場合には該当事業年度で一定額を取り崩して

⇒生じなかった場合には据置期間経過後の5年間にわたって均等に益金算入することになります。

 

 ここでの取崩し事由とは

⇒買収した株式等の売却

⇒帳簿価額の減額

⇒経営力向上計画の認定取消しなどのことを言います

各事由に応じて計算した取崩し額を益金算入することになります

取崩しの事例

 例えば,株式の一部を売却した場合の取崩し額は

「準備金×売却した株式の数/売却直前に保有していた株式の数」で計算します。

 

X期にM&A実施で株式2,000株(取得価額1億円)を取得し

7,000万円(取得価額の70%)を準備金として積み立て

X+3期に500株を売却したケースを想定すると

X+3期の取崩し額は1,750万円(=7,000万円×500株/2,000株)となります

 

また,据置期間中に取崩し事由が生じても

準備金が残る場合は,その残額を据置期間経過後の5年間で均等に益金算入します

前述の例の場合,残額は5,250万円(=7,000万円-取崩し額1,750万円)となるので

X+6期からX+10期でそれぞれ均等に益金算入する額は

1,050万円(=5,250万円/5年)となります。

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